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文楽 [日記]

 昨夜のETV特集「鬼の散りぎわ 文楽・竹本住大夫 最後の舞台」を観て、私が文楽を見始めた頃のことをいろいろ思い出していました。
 私の手元にある一番古い文楽公演のプログラムは「昭和59年二月」のもの。この当時は、東京の二月の文楽公演は必ず近松物を三部制でやり、五月、九月には通し、一二月が鑑賞教室と若手の公演と決まっていました。
 この月の演目は「心中天網島」「曽根崎心中」「女殺油地獄」。
 私が文楽にはまったのは、この公演の少し前に観た映画の「曾根崎心中」(監督;栗崎碧)がきっかけ。人形が劇場内ではなく、屋外で動き、物語を展開していくものでした。お初を簑助さん、徳兵衛を玉男さんが遣われていたのですが、お二人とも頭巾を被っていて一切顔を見せませんでした。
これを観た時、なぜもっと早くに文楽に行っていなかったかをいたく後悔したものでした。いや、正しくは高校生のときに文楽研修生の公演のチケットをもらって行ったことはあったのですが、あまりのつまらなさに、やっぱり歌舞伎の方がいい、と思っていたのです。でも、この映画の後に実際の文楽の本公演を観に行ってその気持ちは吹っ飛びました。どんなものでも最初に観るのは名人、上手の方のものを観るべきだと、心底思いました。
 住大夫さんもまだ文字大夫と名乗っていらして、この公演では「女殺油地獄」の豊島屋の段を語っていました。これは以前に実際に住大夫さんから伺ったことですが、住大夫さんは近松が嫌いだと。それはどうしてもご自分の声が悪声で、色気に欠けるから、やりにくいからだと。しかし、だから余計に稽古をされて、その声を生かす「音」にこだわられたのでしょう。考えてみると住大夫さんは私の文楽生活の中で一番、聴いた大夫さんでした。素浄瑠璃の会の後のトークでも人の気を逸らさない、ユーモアに溢れたお話をたくさん聞かせていただきました。
住大夫さんの全盛期をたっぷりと聴かせていただいたのは幸運なことでしたが、やはり、住大夫引退後の文楽の行く末には寂しさと不安を感じていることは事実です。私自身のテンションももう少し上がれば、と思わないでもなのですが、どうもまだ過去を見てしまっています。そして大好きだった呂大夫さんのことがしきりに思い出されて仕方がありません。やっぱり同時代に贔屓がいないことはきびしい…

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