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新京極映画祭・宮城野その後 [國村隼様]

 最初は、上映開始の13時のちょっと前の12時頃に会場のシネラリーベに着けばいいかなというぐらいに思っていたら、10時15分から整理券の配布との情報。こりゃあ、えらいこっちゃと、7時半の新幹線で東京を発ち、どうにか間に合い、整理券もゲット。

 13時の上映後に山崎達璽監督が挨拶にいらっしゃいました。以下のそのやりとりです。

最初に、これはいたって曖昧な記憶の元に書かれていることをお断りしておきます。

シネラリーベの支配人の方(よくわからないので勝手にそう呼びます)「昨日、今日と宮城野の上映で山崎達璽監督をお迎えしています。昨日は、最後に質問をと皆さんにお尋ねしたら、奥ゆかしい京都の皆さんからはお手があがりませんでしたので、今日は、最初に伺います。何かご質問は?」

お客A「今日初めてお顔を見ましたが、監督さんはとてもお若いのですね。おいくつですか?」

山崎監督「い、いきなりですね。36歳です」

支配人「実は山崎監督と初めて会ったのが愛之助さんの楽屋だったのです。先にどなた挨拶に来ている方がいるなあ、と思っていまして、その時、お話ししたら偶然私より20歳若い、学校の後輩だったんです。その時は先輩風を吹かせてお寿司をおごりましたよね」

山崎監督「はい(笑)」

お客B「絵師の矢太郎が左ききだったのですが」

山崎監督「あれは、映画の中で絵を描いてくださった歌川さんが左ききだったんです。絵を描く手がアップになることってあまりないのですが、この映画ではそれが重要ですので、矢太郎も左ききにしました。ただ、写楽が左ききだったという説はあるんですが。でもある時、愛之助さんは、宮城野に向かって着物を投げるシーンのときについ右手で投げてしまったんですが、周りにいるスタッフ、誰も気がつかなくて、私も。そうしたら、愛之助さんは、ああ、矢太郎は左ききでしたねって、おっしゃって。撮り直しをしました。」

お客C「非常に不思議な作り方をしている作品だなあと思ったのですが」

山崎監督「この映画を普通に撮ったら江戸の町全体のセットを作って撮らなければならないのですが、そんな予算はありませんので、美術の池谷さんにご相談したらあのような手法を考えてくださいました」

お客D「今日は東京から来ました。國村さんのファンで、赤坂ではスタンダード版を見たのですが、今日は、ディレクターズカット版の上映があるということでしたので、飛んできました。両方観るとかなり印象が違います。DVDはスタンダード版ということですが、ディレクターズカット版の販売はないのですか?」

山崎監督「スタンダード版もディレクターズカット版も根幹に違いはないのですが、原作に近いものは、スタンダード版なんです。ただ、毬谷友子さんに伺ったところこの本は、矢代さんが非常に売れない頃に書かれたもので、その姿が矢太郎に投影されているのではないかとちょっと思ったので、矢太郎を中心に描いたディレクターズカット版も作ってみたくなったです。今はまだディレクターズカット版のDVDの話はないのですが、今日、観てくださった声をいろいろなところにあげてください。

 今、國村さんのことが出てきたのでちょっとお話ししたいのですが、國村さんというキャスティングはかなり直前に決まったんです。私は國村さんにはもちろん映画やテレビでは拝見していましたが、お会いしたことはなかったんです。セクシーな方だなあでも、ただ怖そうな感じで…。で、初めてお会いしたのは衣装合わせのときだったですが、衣装合わせって女優さんは衝立とかあって気を遣うのですが、男優さんだとパンツひとつになるんです。國村さんはそんなのはもう慣れているのでパンツひとつで…会って、2分後がパンツ姿(笑)。怖くなかった…それに普段、お話される時って、声が小さいんで、何をおっしゃっているのかわからない時もあって(笑)。映画の中では対立する関係の愛之助さんとも普段は、もう河内弁で話していて、ただの大阪のおっちゃんとにいちゃんって感じでした(笑)。でも撮影となるとガラっと変わる、これがもうすごくて…。」

支配人「希林さんはいかがでしたか?」

山崎監督「希林さんも怖そうというイメージがあって、事実、そういう噂もきいていたのですが、全然そんなことはありませんでした。この映画の中で希林さんの女将はものを食べているシーンが多いのですが、あれは全部、希林さんの持ち込みで、何を食べるかも希林さんのアイデアです。希林さんに出演のオファーをしたときも、この女将の役は自分しかない、とおっしゃってくださったんです。」

お客E「私は、スタンダード版も観、原作も読みましたが、最後の場面はありませんよね。入れるのは勇気のいることだったと思うのですが、どう意図で入れたのですか?」

山崎監督「この脚本を書くのには2年ぐらいかかっていて、最後の場面は入れるか、入れまいかすごく何回も迷いました。ただ、写楽という絵師の歴史ミステリー的な部分も撮りたいと思っていた。それには最後の場面が必要になる。入れるかどうかわからないけれど撮っておいたのです。」

お客F「今日は、愛之助さんのファンもたくさん来ていると思うのですが、愛之助さんの印象を」

山崎監督「愛之助さんとはいろいろあるので、話し出したら終わらないのですが、ともかくきちんとした方です。この映画を撮っているときちょうど国立劇場に出ていて、それが終わってから撮影する。撮影は夜の9時頃から始めて、3時や4時頃に終わる。それから愛之助さんはホテルに戻ってからもう、朝の9時頃には劇場入りするというのが1ヶ月続きました。すごく疲れていると思うのですが、愛之助さんから疲れたとか、つらいという言葉は誰も聞かなかったんですよね。すごいと思いましたね」

  他にも歌舞伎的手法を使ったことについても答えてくださっていました。 

 トーク終了後、アンケートを書いて、劇場を出ようとしたら、ロビーに山崎監督がいらしたので、直になぜ写楽を國村さんにと思われたのか伺いました。

山崎監督「写楽って、あんまり、オーラがあり過ぎる人だとだめだと思ったんです。でも存在感とちょっと下品な感じも出せて、セクシーさもある方っていったときに僕の中では國村さんだったです。でもちょうど隠し砦の三悪人を撮っている時だったんで、もし、雨で撮影が流れたら大丈夫ということでした。そうしたら雨で撮影が流れて、出ていただけることになったんです」

  と、もっともらしく書いていますが、何せ、映画終了後数時間が経ち、京都の夜、美味しいお酒をしこたま飲んでいますので…。

 それにしても「宮城野」というのは不思議な映画です。ついこの間までは、DVDはスタンダード版だからいいかなあと思っていたのですが、今日、観たらスタンダード版を見直してみたくなりました。うーん、なぞは深まる…懐はきつい。

 
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コメント 6

おいちん

早速のアップありがとうございました!
キャストについていろんなお話が出たんですね。
監督と國村さんの初対面のところ…パンツ一丁に赤面(笑)
ちょっこし想像しちったよん(〃∇〃)

お客Dってポケタンさんかと思いましたが…。
どっちにしてもお客Dさんの質問からお話が広がったのは確かですよね。
…感謝!

まだ一度も見ていないので、DVDがすべてです。
発売されたら、このレポートを参考にしながら見てみたいと思います。
京都の夜、楽しかったですか?
遠方まで突撃、お疲れさまでした!

by おいちん (2010-10-17 08:31) 

猫

 素晴らしい記憶力!と感動しながら読ませていただきました。ありがとうございました。
 私なんかおいしいお酒を飲む前に、既に記憶が怪しくなってしまう…早い話が右の耳から聞いて…左の耳から「あー大事なことまで流れていく~」という情けなさ…なんですが、不思議なもので、こうして読ませていただくと、記憶が少し蘇ってまいりまして…少し書き足しさせていただきます。
 映画の中で歌舞伎の舞台仕立ての演出のシーンが1か所ありまして、ここで「他にも歌舞伎的手法を使ったことについても答えてくださっていました。」と書かれている手法が登場しました。
 「だんまり」と言いまして、何人かの登場人物が、暗闇の中で黙ったまま、お互いのことを探り合う演出のことをいいます。
 宝物や手紙など大事なものを奪い合います。
 真っ暗闇という設定のため(舞台上は暗くありませんよ。暗いと観客にも見えませんし…笑)実際は見えている手やモノは見えないものとして演技する必要があり難しいのです。
 歌舞伎俳優の愛之助さんはともかく、他の方はとっても大変だったことでしょう。
 1か月くらいお稽古されたようにおしゃってましたが、毎日何時間もという訳にいかないでしょうから、実際はもっと短期間のお稽古で臨まれたことと思います。
 あのシーンは舞踊ではなかったのです。
 このシーンの最後に愛之助さんが「見得」を切るシーンがございますが、監督いわく「50センチくらいの位置で見せていただき感動した」と
 私はもっと離れた客席から、今回で3回スクリーンの中の見得を見せていただきましたが、素晴らしかったです。
 もうひとつ、今度は映画の技法ですが、「銀流し」が1ヶ所
使われてます。
 市川崑監督作品の「おとうと」はこの銀流しで撮られていることで有名ですね。
 見終わってまた見たくなる……宮城野とは不思議な映画です。
by 猫 (2010-10-18 14:02) 

ポケタン

おいちんさん、多分、東京から来た客は私ぐらいだったのでは。実は質問の後に山崎監督はすぐに國村さんの話をしようとしたのですが、支配人がマイクを一度取ってしまい、別の話になったのですが、監督は「今日は出演者の方のエピソードを話す」と心に決めていたようで、あの初対面の時のお話になったのです。
by ポケタン (2010-10-18 20:58) 

ポケタン

猫さん、ありがとうございました。そうでした。歌舞伎の手法の話がどこで入ったのか曖昧で。
「だんまり」のシーンでは、かえって歌舞伎役者ではない方たちの動きに注目して欲しい、とも話していらっしゃいましたね。
by ポケタン (2010-10-18 21:02) 

(V)^l^(V)

楽しいレポートありがとうございます。さすが!ポケタンさん。
しかもやっぱりDさんはポケタンさんですか!!
監督から國村さんの秘話も聞けて、京都も楽しめて羨まし~い♪
仕事が無かったら行きたかったのに・・・と思っていた私にとって、行ったつもりになれて本当に有難いです。

直接、監督とお話もされたんですね。
最近みなさんアクティブで尊敬いたしますm_|_m
私は緊張しぃでダメだなぁ~なんて弱音を吐かずに、バルタンも頑張る!のです。
by (V)^l^(V) (2010-10-18 22:31) 

ポケタン

バルタンさんもいらしていたら、また、一層盛り上がったのではと思っています。
>最近みなさんアクティブで尊敬いたしますm_|_m
アクティブの代名詞はバルタンさんですよ。影響されちゃってますが。
ぜひまた一緒に突撃隊を組ましょう、隊長はバルタンさんで(笑)

by ポケタン (2010-10-18 23:47) 

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