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「三人姉妹」のお話 [國村隼様]

「三人姉妹」は2001年10月にシアターコクーンで上演された岩松了さん演出によるもの。國村さんにとってはほんとうに久々の舞台でした。10年前なのですね〜。この時のいろんな方の感想によると「國村隼さんが格好よかった」というのが多いです。観たかった…と言っても仕方がありませんので、せめて原作を読んで、パンフレットを眺めて想像するばかりです。
桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

桜の園・三人姉妹 (新潮文庫)

  • 作者: チェーホフ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1967/08
  • メディア: 文庫
 パンフレットの中に載っていた三人姉妹の方々のおしゃべりがちょっと面白かったので、これも勝手に…。ちなみに配役は、オーリガ(杉崎美智子さん)、マーシャ(室井滋さん)、イリーナ(緒川たまきさん)です。

 


ナゾの多い岩松チェーホフ

杉嶋 稽古は始まったばかりだけど、何だか時間が経つのが早いですね。何度も同じシーンを繰り返しやるので、考える暇もあまりないって感じ。私たち、すごく緊張してるし休憩時間も少ないから・・・()

室井 3人で仕事をするのは初めてで、まだ、あまりおしやべりもしてないですよね。私は今、「チェーホフってわからない!」っていうのが正直なところ。時代背景もある程度わかってないと深く理解できないんじゃないかと思うけど今回は現代の日本という設定になっているので、これがまたわからない()

緒川 室井さんがときどき「ナゾが多いよね」つてぼそぼそっと言ってくださるでしょう。私はそのたびにほっと胸をなで下ろしてました()。私、実は読み物としてもチェーホフつてあまり興味がなかったので……。

杉嶋 うわっ、そんなこと言っていいの?

室井 今のところカットしてもらわなきや()

緒川 勝手な思い込みですが、室井さんもそうなんじゃないかと思って。

室井 当たり!()

緒川 その室井さんがこの仕事をお受けになったということは、何かとんでもなく面白いものが先に見えてらっしゃるんだなあと思って。それで私も一生に一度あるかないかのチェーホフにチャレンジしてみようと思ったんです。

杉嶋 私はチェーホフは少しずつ見たり読んだりしていたので、お話を頂いて単純に「嬉しい!」って思ったんですけど、実際やるのは全然違う。オーリガって、どーんとして目端が利いていて、全体を見て、見て、見ていくっていう役なので正直「これは大変やなあ」つて。

緒川 私は登場人物の中ではイリーナがいちばんわかりやすいので、よかったなあって思っています。まだ地に足がつく前の、とにかく理想を掲げて、それだけを支えに生きている感じが、すごく共感できますね。


好きな男、嫌いな男は?

緒川 登場人物の中で好きなタイプは、あえて言えば、チェブトイキン先生かな。本当にダメなダメなおじい様ですけれど、年を取っても恋の話が似合うような青さってちょっといいなって。

室井 私はヴェルシーニンと不倫をする役なので、すごく好きにならなきゃいけないんだけど……でも、あの人って、ちょっと変じゃない()? 國村さんがすごく素敵なので、とりあえず彼を見ようというか。

緒川 國村さんじゃなかったら?

室井 ちょっとダメかもしれないな()。だってさあ‥‥すごく気が多いし、キザだし……。     

杉嶋 一時岩松さんが、「僕、ヴェルシーニンやっちゃだめ?」って言ってたらしいけど。

室井 イヤだ、そんなの!(一同爆笑)多分マーシヤは「こんなはずじゃなかった」って思うことばっかりの人生から逃げ出したかったんじゃないかな。だからヴェルシーニンの哲学的なところに惹かれたんだと思うけど。

杉嶋 私は、どの人物も面白味があってけっこう好きなんです。長ったらしいことをしゃべるのも、いろいろ裏があるからだろうなって思えるから。でも、やっぱりヴェルシーニンは嫌だな()。「わざわざこんなにしゃべらんで早く言えや!」って思ってしまう。

緒川 じゃ、満場一致で……()

杉嶋・室井 ワースト1はヴェルシーニン!


もし、「清書」の人生を生きられたら?

杉嶋 結婚はしているかな……。あとはもう一回、養成所からちゃんと勉強し直します。今までなまけてしまったことが多いんじゃないかと思って()

室井 じゃ、芝居はやってぃるんだ。

杉嶋 そうですね………、はい。

室井 私は女優はもういいな。もうちょっと人類のために尽くしたい()。生物学者とか、宇宙飛行士とか、消防士とか……何か、お化粧しなくても生きてぃける仕事。何でそうなるための勉強をしなかったかなって思いますね。

でも、もう遅いのでこのまま終わらせてもらいます()

緒川 私は「書き直す」コースと「もうナシ」というコースを選べるなら、面倒臭いからナシがいい。でも、書き直すなら、私も学者がいいです。一生涯、閉じこもっていることが偉いと言われるような……。

室井 イヤなの、人と会うのが?

緒川 限られた範囲内で会うんだったらいいけれど、会いたくもない出会いがあるのは絶対イヤ。今何時だかわからないぐらい、一日中家にいられる仕事がしたい。それで、とにかく突き詰めて突き詰めて衰えていきたい。

室井 緒川さん、変だね()

杉嶋 うん()

 

「モスクワヘ、モスクワヘ!

杉嶋 私も「こではないどこかへ」って思うことはありますねえ。やらなきゃいけないことがいっぱいあって、(頭を抱えながら)あれもやらなきや、これもやらなきゃってとき!

室井 お姉さーん()!大丈夫?

緒川 オーリガがのりうつってる()

杉嶋 そういうときは、山があって川があってすごくお天気がいいところへ行きたくなります。何か病気の人みたいね()

室井 その気持ち、すごくわかるな。今日、稽古の前に家でご飯を食べながらテレビを見てたら、京都の町並みを映した映像が出てきたの。その瞬間「ああ、京都行きたい!」ってふわあ一っと妄想が始まっちゃって。湯葉食べて、お豆腐食べて、イノダのコーヒー飲んでとか。でも、暇な時は意外とどこにも行かないんですよ。

緒川 私はよく、寒いところへ行きたいと思います。寒い方が音iの響きなんかもきれいですし。精―杯の寒さの中、自分だけじゃなくみんなが閉じこもっている。そう思うと安心するどいうか、にこっとできるような……。とにかく閉鎖的な感じが好き()

室井 閉鎖的……それを緒川さんに言っていいものかどうか悩んでた()

緒川 だから、台詞に出てくる5月のモスクワじゃなくて、寒い時期に行ってみたいんです。映像で見る限り、みんな息がふわっと白くて毛皮の帽子を被って、どこか寓話の世界のような感じさえする。そういう場所にすごく憧れますね。

室井 私、TVの『電波少年』でシベリア鉄道の旅をさせられて、それが初めてのロシアだったんです。ロシアの人って本当にウォッカをすごく飲んで、よくしゃべるんですよ。食料を買い込んで車内で炊事したりして長旅をしながら…。

杉嶋 『三人姉妹』でもみんな、すごくしゃべりますよね()

室井 そうそう。きっと昔から、寒くて閉ざされた冬、暖かい部屋の中で、みんなで何かを語ったり人生のことを考えたりする時間がすごく大切にされている土地柄なんじゃないかなって思ったの。たった20日間程の浅い経験だったけど。シベリア鉄道の中って、いろんなロシアの音楽がず一っと流れているんですよ。ちょっと古くてアンニュイな、心ひかれる感じの音楽で、聞いていると何か内省できるような……。稽古中、岩松さんがそういう音楽をかけて下さるでしょう。あれ、すごく好きなんだけど。あの音楽が、ちょうど『三人姉妹』のイメージと重なっていますね。

 

『三人姉妹』のイメージを色でいうと?

室井 ボルシチの色かな。ああいうあったかいオレンジ色。ちと単純すぎる?()

杉嶋 私だったら白と緑かな……。何か白樺のイメージがどーんとあって。最初に戯曲を読んだときはグレーみたいな感じだったんですけど、白とグリーンがだんだん濃くなってきたような。

緒川 私は落ち葉とか、ひび割れた樹の幹みたいな、いろんな色のまだらって感じ。明るい花の色じゃなくて、枯れた色。でも、これから稽古が進むと変わってくると思います。

杉嶋 これからどうなっていくのかなあ。最後にちょっと抱負など語ってみますか()

緒川 岩松さんて、突然いろんなことをおっしゃるでしょう?今日はオーリガが「涙声で」言うはずだったところが「泣き崩れて」になっちゃったり、國村さんに突然ターンしてみろとか。今、揺れているものを岩松さんが、すごい力でぎゅっと定着させているのがわかる。毎日ほんの少しずっだけど、仕上がりに近い形が見えてきて、すごく心強いなって感じています。

室井 全くイリーナの言う通りだわ()。不安と楽しみの二本のレールの上を走ってる感じで、すごくスリリングですね。字面を読んでも理解できなかった台詞が、稽古の中でふっと耳に入ってきたり。

杉嶋 自分の体に通らないことが、まだいっぱいあるけど…。いっぷう変わった、すごく面白いチェーホフができるんじゃないかっていうのが、この辺に(顔の前で手を振り回す)見えているのにまだつかめない。

室井 昨日1万不安だったら、今日は9999不安、みたいな感じで、少しずつだけど「不安」が「楽しい」に変わってきている。昨日は「わからない!」だったところが今日は「大丈夫かも」になってるし。つていうことは、あと30日したら、「やっぱり岩松さんのチェーホフは最高よね」つて言ってると思うな()

杉嶋 お客様みんなにも、そう思ってもらえたらいいですね。

 


 で、そのヴェルシーニンですが…

三人姉妹パンフ.jpg
 素敵ですね…この舞台の後、ほぼ2〜3年おきで舞台にご出演されるようになるわけで。
ああ、9月の「朱雀家の滅亡」が待ち遠しいです!

タグ:國村隼
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コメント 8

恥ずかしがり屋

【ふたたびの恋】に続き長文掲載ありがとうございます。いつもレアな新情報満載で拝読させていただくのが楽しみです。勿論今もステキでいらっしゃいますが…その当時はスリムでシャープで、ちょっと危険な香りがしつつクレバ-で…というのが私の勝手な印象です。四半期近いファン歴ですが私には皆さんに提供する情報がなくて…(T_T)つくづくファン友さん方の熱意(愛!)に感激しています。
by 恥ずかしがり屋 (2011-05-03 00:30) 

ポケタン

>危険な香りがしつつクレバ-で…というのが私の勝手な印象です。
わかります、その感じ。今でもときどきそういう雰囲気を出されますよね。それにしても、恥ずかしがり屋さんはずっと以前から國村さんのそういう素敵さをしっかり見ていらしたのは本当に素晴らしいです。私こそそんなファン友の皆さんの熱意に引っ張られて、走っているだけです。
by ポケタン (2011-05-03 22:16) 

恥ずかしがり屋

【ふたたびの恋】は大阪でも(あっ私大阪人です)上演されたのですが…パンフレットの恋愛観にも知的さが漂っていますよね。【朱雀…】はチケットがとれれば東京まで伺う予定です。前回の中山仁さんの朱雀は=朗々たる舞台俳優さん的お声=だった印象ですが…國村さん朱雀は興味深いです。私がキュン♪としてしまう危険な香りも はにかんだような表情も拝見できないでしょうが 新しい魅力に惹かれるかもしれません…ご一緒に観劇できれば楽しいでしょうね

by 恥ずかしがり屋 (2011-05-04 00:52) 

ポケタン

恥ずかしがり屋さん、國村さんがどんな朱雀侯爵を見せてくださるのか、本当に楽しみです。
私もぜひご一緒できればと願っています。
by ポケタン (2011-05-04 21:34) 

猫

 三人姉妹掲載ありがとうございます。
 ビデオでいいですから、この舞台見たい!
by 猫 (2011-05-06 11:40) 

ポケタン

この舞台はシアターコクーンでだったので、記録映像は録っているとは思いますが、なかなか市販されませんからね。PARCOみたいにしてくれとありがたいのですが。
by ポケタン (2011-05-06 22:00) 

(V)^l^(V)

連続長文レポありがとうございます。
舞台は機会を逃すと出会えなくなってしまいますから、本当に有難いです。
できることならば・・・観たいですね~♪
by (V)^l^(V) (2011-05-08 20:00) 

ポケタン

バルタンさん、観たいですよね〜。でも、映画やテレビに比べてなかなか難しいです(泣)
by ポケタン (2011-05-09 00:16) 

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